ガムトレーニングは何歳まで?大人の効果とスマホ食いしばりの注意点

こんにちは。大阪市鶴見区・放出の「はなてん おとな・こども歯科 松井デンタルクリニック」です。

まず、ひとつだけお願いです。今、上下の歯が触れていたら、そっと離してみてください。

どうでしたか? 「あ、くっついてた」という人は、この記事が役に立ちます。

■ ガムトレーニングは何歳から?何歳まで?

当院では、ガムトレーニングを何度か紹介しています。そのたびに、「何歳からできますか?」「大人もやったほうがいいですか?」というご質問をいただきます。

先に、子どもと大人のちがいをお伝えします。

子どもの場合
始める目安は4〜5歳頃です。乳歯の奥歯が生えそろい、しっかり噛めるようになる時期です。もうひとつ大事なのは、「噛むけれど飲み込まない」というルールが分かる年齢であること。小さいうちはガムと食べ物の区別がつきにくく、飲み込む危険があるためです。

お子さんは顎が成長している途中なので、よく噛むことが顎の発育につながります。歯がきれいに並ぶには、並ぶためのスペースが必要です。そのため、ガムトレーニングをおすすめしています。

・始める時期や効果、注意点 → 子どものガムトレーニングってなに?

・ガムの丸め方、貼り方などのやり方 → 顎の成長と歯並びと虫歯予防のためのトレーニング

歯並びや顎の成長が気になるお子さんは、小児矯正のページもご覧ください。

大人の場合
顎の成長はもう終わっています。つまり、目的が「顎を育てる」ではなく、「噛む力を保つ」に変わります。しかも大人は、人によって「鍛えたほうがいい人」と「休ませたほうがいい人」に分かれます。ここが、今回の大事なテーマです。

■ 先に結論:ガムを噛めば食いしばりが治る、わけではありません

ポイントは3つです。

・スマホの使い方と、食いしばり・顎の不調には関係があると報告されています

・ただし、「ガムを噛めば食いしばりが治る」という単純な話ではありません

・「噛む力を鍛えること」と「余分な力を抜くこと」は別のものです

大人のお口に大切なのは、必要なときは噛んで、それ以外は顎を休ませることです。

■ 食いしばりは、寝ているときだけじゃない

食いしばりというと、寝ているときの歯ぎしりを思い浮かべる人が多いと思います。でも実は、起きている間も、無意識に歯を噛みしめている人がたくさんいます。

しかも、強く噛んでいなくても問題になることがあります。上下の歯を軽くくっつけたままにするクセです。これを専門用語で「歯列接触癖(しれつせっしょくへき)」、略して「TCH」と呼びます。

リラックスしているときの歯は、上下で少し離れているのが自然な状態です。ところがスマホやパソコンに集中すると、歯がくっついたままになりがちです。弱い力でも長く続くと、顎の筋肉や関節にじわじわ負担がかかります。

「強く噛んでないから大丈夫」とは言い切れないのです。

こんなことはありませんか?

・気づくと、いつも歯がくっついている

・夕方になると顎やこめかみがだるい

・朝起きたとき、顎が疲れている

1つでも当てはまるなら、顎が頑張りすぎているサインかもしれません。

■ スマホと顎の不調は、どんな関係があるの?

近年、スマホと顎の健康についての研究が進んでいます。

① 2021年の研究(若い大人が対象)
スマホの通知で夜中に起こされる、情報にストレスを感じる、使いすぎてストレスになる。こうしたことと、歯ぎしり・食いしばり、顎関節症(顎の痛みや動かしにくさが出る病気)との関連が報告されました。

② 2026年に発表された調査(大学生856人が対象)
スマホに頼りすぎる傾向と、顎の症状との間に、心の負担やお口のクセを通じた、間接的なつながりがあることが示されました。

ただし、この調査は「ある時点の状態を調べたもの」です。つまり、

・「スマホが原因で食いしばりになった」

・「スマホを減らせば必ず治る」

と証明したわけではありません。

だからこそ、スマホをやめるのではなく、使っているときの自分の状態に目を向けましょう。

・画面に集中して、顎に力が入っていないか

・前かがみの姿勢を、長く続けていないか

・ちゃんと休憩できているか

日本顎関節学会も、顎の不調への生活指導として、姿勢、噛みしめ、心の緊張に気をつけることを挙げています。

■ 大人のガムトレーニングは、効果があるの?

ガムは、噛む力をきたえる道具として研究されています。

2024年に発表された研究では、健康な大人58人が、ガムを使って6か月間トレーニングしました。すると、3か月後の最大咬合力(思いきり噛んだときの力)が、トレーニングしなかったグループより高くなりました。

大人でも、ガムで噛む力が上がる可能性はあるということです。

ただし、注意点があります。

・対象は健康な人だけで、顎関節症のある人は入っていません

・食いしばりを減らせるかを調べた研究ではありません

つまり、「噛む力を上げたい人」と「無意識に噛みしめ続けている人」は、必要なことがちがいます。食いしばりが気になるからといって、もっと強く、もっと長く噛めばいいわけではありません。

■ 顎が痛い人がガムを噛むと、どうなる?

顎の筋肉の痛みに、決められたやり方のガム運動をした研究もあります。2006年の小さな研究(患者20人、8週間)では、運動したグループで痛みが軽くなりました。

でも、その他の項目では差が出ず、研究した人たち自身も「結果にばらつきがあり、さらに研究が必要」と述べています。

ここから言えるのは、その人の状態に合った運動が役立つ場合もあるということです。「顎が痛い人はみんなガムを噛めばいい」という意味ではありません。

アメリカの国立歯科・頭蓋顔面研究所(NIDCR)は、顎に不快感があるときの対応として、食いしばりやガムを噛む習慣を減らすことを挙げています。痛みや疲れがあるときは、「鍛える」より「負担を減らす」ほうが大切な場合があるのです。

■ スマホを「食いしばりに気づく道具」にしよう

実は、スマホは食いしばり対策にも使えます。

2024年の研究では、日中に食いしばりがある72人に、スマホアプリの通知と付箋などの目印を組み合わせてもらいました。30日後、アプリだけのグループより、両方使ったグループのほうが、食いしばりの回数が少なかったと報告されています(本人の申告ベース)。

コツは、ずっと顎を気にし続けないことです。生活の中に「力を抜くきっかけ」を作ればOKです。

① 目印を作る
スマホの待ち受けやパソコンの端に「歯を離す」と書いておきます。目に入ったときだけ、歯がくっついていないか確認しましょう。

② 気づいたら力を抜く
上下の歯をそっと離して、頬と顎の力をゆるめます。大きく口を開ける必要はありません。

③ 姿勢を変えて、画面から離れる
前かがみや頬杖を続けないようにしましょう。作業の区切りで姿勢を変えるだけでも違います。

■ こんなときは、自己判断せず歯科医院へ

・口を開けると痛い

・口が開きにくい

・食事がつらい

・顎のだるさがずっと続く

このような場合は、自己流でガムトレーニングを始めず、先に歯科医院で相談してください。顎の運動療法は、専門家の指導のもとで行うことが勧められています。

ちなみに、顎から音が鳴るだけで、痛みや動かしにくさがない場合は、必ずしも治療が必要とは限りません。

顎や歯の不調には、むし歯や歯周病が関係していることもあります。気になる方は、虫歯・歯周病の診療もご確認ください。

■ よくある質問

Q. ガムトレーニングは何歳からできますか?

目安は4〜5歳頃です。乳歯の奥歯が生えそろい、「噛むけれど飲み込まない」というルールが分かる頃が始めどきです。詳しくは子どものガムトレーニングってなに?をご覧ください。

Q. 子どもにやらせるとき、気をつけることは?

必ず大人がそばで見守ってください。ガムを長時間与えっぱなしにしない、食後すぐや寝る前は避ける、という点も大切です。

Q. 大人もガムトレーニングをしたほうがいいですか?

人によります。噛む力を保ちたい健康な方には役立つ可能性があります。一方で、顎が痛い方や食いしばりが強い方は、まず顎を休ませたほうがよい場合があります。

Q. ガムはどんなものを選べばいいですか?

虫歯予防のため、キシリトールなど砂糖の入っていないものがおすすめです。当院でも、キシリトール100%のガムを販売しています。

Q. 食いしばりに気づくコツは?

「歯を離す」と書いた付箋や待ち受けを、目に入る場所に置くのがおすすめです。

■ まとめ:「噛む」と「休む」のバランスを

・ガムトレーニングを始める目安は、子どもは4〜5歳頃。大人は目的が「噛む力を保つ」に変わる

・スマホの使い方と顎の不調には、関連が報告されている。ただし「スマホが原因」と決まったわけではない

・ガムで噛む力が上がる可能性はあるが、食いしばり対策とは別の話

・顎が痛い人は、鍛えるよりまず休ませる

・スマホの目印や通知を使えば、力を抜くクセをつけやすい

大切なのは、「たくさん噛むこと」ではなく、今のお口に合った使い方をすることです。

最後にもう一度。今、あなたの歯は離れていますか?

はなてん おとな・こども歯科 松井デンタルクリニックでは、お子さんだけでなく、大人の方のお口の悩みも相談できます。食いしばりや顎の疲れが気になる方は、受診のときにお気軽にお伝えください。

監修:院長 松井秀行